ファクタリングの仕訳は?財務諸表の会計処理を解説

更新日:2020.11.18
投稿

佐藤 隆道

ファクタリング会計処理の流れ

ファクタリング会計処理の流れ

契約時や入金時など、タイミングによってファクタリングの仕訳は変化します

それでは実際の例に沿って、ファクタリングを利用した場合の会計処理を見ていきましょう。

今回は、売掛金100万円を、手数料10%でファクタリング会社に売却したケースとします。

売掛金発生時

まずは、通常の営業取引で100万円の売掛金が発生した場合の仕訳です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
売掛金 100万円 売上金 100万円

ファクタリング契約時

次に、ファクタリング契約を締結した際の仕訳です。

借方科目 金額 貸方科目 金額
未収金 100万円 売上金 100万円

ファクタリング取引の対象となる売掛債権は、未収金という科目で借方に計上します。

未収金とは、金銭債権の処理に使われる勘定科目の一つで、代金を受け取る権利のこと。
通常の取引以外で発生した売掛金や、その他債権を計上するのに使います。

売掛債権を譲渡して手に入れたお金は、売掛金ではないため、将来入ってくるお金として幅広く計上できる、未収金にカテゴライズするというイメージですね。

ファクタリング会社からの入金時

売掛金の早期現金化に成功し、ファクタリング会社から入金があった場合の会計処理です。
売掛金100万円のうち、手数料10万円を差し引いた90万円が自社の口座に入金されます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 90万円 未収金 100万円
売上債権売却損 10万円

あくまでも将来入ってくるお金として計上されていた未収金のうち、現実に入金されたの90万円は、普通預金として計上します。

そして、手数料の10万円ぶんは売上債権売却損という勘定科目で処理。 売上債権売却損とは文字どおり、売掛債権譲渡の際に発生した損失を計上するための仕訳です。

また、売上債権売却損は、それとほぼ同じ意味を持つ割引料債権割引料譲渡損という勘定科目で計上しても構いません。

ファクタリングの手数料、決算時の区分表示は?

ファクタリングの手数料、決算時の区分表示は?

それではファクタリングを利用した場合、決算時はどのように会計処理を行えばいいのでしょうか?

勘定科目については決算時も売上債権売却損でOK。
雑損失という、もっと広い範囲の損失で仕訳ても構いません。

そしてファクタリング手数料の区分表示は営業外費用 営業外費用とは、会社が本業以外で経常的に発生する費用のこと。

ファクタリング会社に支払った手数料も、本業とは関係のない出費ですから、営業外費用として区分されます。

もし気になることがある場合は、担当の会計士税理士に事前に会計処理方法や仕訳を確認しておくと安心です。

ファクタリングの消費税

ファクタリングの消費税

通常、売掛金に対しては消費税が発生します。

現時点で消費税の税率は8%

上記の例であれば、売掛金100万円に対して、108万円の請求がなされ、108万円が入金、8万円分の消費税が課されます。
しかし、ファクタリングにかかる手数料は消費税の課税対象外です。

これは、売掛債権を含む有価証券等の譲渡が、一部の非課税取引として消費税法で認められているため。

このためファクタリングでは、売掛債権譲渡時のファクタリング会社からの入金、上記の例でいうと90万円のみ消費税の課税対象となります。

消費税を請求する悪徳業者に注意

本来、ファクタリングの手数料は、消費税の非課税取引。
にも関わらず、「本来手数料は30万円だが、そこに消費税が加わって32万円です」と言われたり、請求書に消費税という項目がある場合は必ず業者に対して説明を求めましょう。

手形割引が慣例だった日本では、ファクタリングの文化の認知度は低く、まだ海外ほど浸透していません。
こういった状況を利用して8%の消費税を水増し請求し、素知らぬ顔で自分の懐に収めてしまう悪質な業者も中には存在するのです。

ファクタリングの違法な取引とは?悪徳業者の契約内容を解説

他の資金調達方法の仕訳の違い

他の資金調達方法の仕訳の違い

ファクタリングには、類似した資金調達方法がいくつかありますが、その会計処理は異なります。
その仕訳の違いについても確認しておきましょう。

手形割引

ファクタリングと類似したサービスとしては、銀行が提供する手形割引があげられます。

支払いが約束手形で支払われた場合、銀行に持ち込めば、実際の資金化日よりも前に現金化ができる手形割引というものです。
約束された支払いを早期現金化できるという点では、ファクタリングとよく類似していますが、手形割引はあくまでも約束手形を担保に融資を受ける取引

ファクタリングでは、売掛金が売掛先から支払われなかった場合でも、利用企業がその損失を補填する義務はありません。 しかし、手形割引ではもし手形が決済されなかった場合、利用企業側が代わりにその代金を銀行に支払う必要があるという違いがあります。 ⇨ファクタリングと手形割引の相違点を確認

それではまず、約束手形100万円を受け取った場合の仕訳を確認してみましょう。

約束手形を受け取った場合 借方科目金額貸方科目金額 受取手形100万円売上100万円 そして通常の取引通り、約束手形の資金化を満期日まで待った場合、仕訳は以下のようになります。 約束手形を受け取った場合 借方科目金額貸方科目金額 当座預金100万円受取手形100万円

それでは次に、約束手形100万円を、5%の手数料を支払って、95万円で手形割引したケースの仕訳をみてみましょう。

銀行で手形割引を受けたときの仕訳
借方科目 金額 貸方科目 金額
当座預金 95万円 割引手形 100万円
手形売却損 5万円

※手形売却損は、支払利息割引料や割引料など、類似する項目を代用して仕訳可能です。

売掛債権担保融資

ファクタリングと類似したもう一つの資金調達方法に、売掛債権担保融資があります。
手形割引が手形を担保としていたのと同じで、今度は売掛債権自体を担保にして、銀行などの金融機関から借入をおこなう方法です。

それでは早速、売掛債権を担保に、年利8%で100万円を借り入れたケースの仕訳をみてみましょう。

借入時の仕訳
借方科目 金額 貸方科目 金額
普通預金 100万円 借入金 100万円
返済時の仕訳
借方科目 金額 貸方科目 金額
借入金 100万円 普通預金 100万円
支払利息の仕訳
借方科目 金額 貸方科目 金額
支払利息 8万円 普通預金 8万円

売掛債権担保融資の会計処理は、一般的な借り入れと同じ
このため借入金という形で、仕訳に負債が発生するのがファクタリングとの大きな違いです。

借入とファクタリングの貸借対照表を比較

借入とファクタリングの貸借対照表を比較

それでは実際に決算書を作成する場合、ファクタリングと借り入れでは、仕訳にどのような違いが出てくるのでしょうか?

今までの会社の業績の蓄積とも言える、貸借対照表を比較します。

資本金100万円の会社が、金融機関で1000万円を借り入れた場合。
そして、1000万円の売掛債権を手数料5%でファクタリングした場合の違いについて見ていきましょう。

借り入れを行った場合の貸借対照表

資本金100万円の会社が、一般的な金融機関で1000万円借り入れた場合の貸借対照表です

借り入れした場合の貸借対照表
資産負債
現金預金1000万円借入金1000万円
その他資産1000万円純資産
資本金1000万円
計2000万円計2000万円

資産の部分に現金が増え、そのかわり負債として借入金が発生。

現金を手に入れた分資産は増えますが、貸借対照表上では負債比率が上がるというデメリットがあります。

ファクタリングを行った場合の貸借対照表

次に、同じく資本金100万円の会社が 1000万円の売掛債権を手数料5%でファクタリング会社に譲渡した場合の貸借対照表について見ていきましょう。

ファクタリングした場合の貸借対照表
資産負債
現金預金950万円0円
売掛金▲1000万円総資産
繰越利益剰余金▲50万円資本金1000万円
計950万円計950万円

ファクタリングを行った場合、売却した売掛債権分の資産が減少しますが、そのぶん現金の資産が増加します。
つまり、貸借対照表上の負債は一切変動せず、負債比率に影響は及しません

また、売掛金を早期現金化するファクタリングには、オフバランス化=貸借対照表を軽くする効果があります。

単純に、売掛金の項目が消えるので、貸借対照表をスリム化できるということです。

ファクタリングを利用時における損益計算書

ファクタリングを利用時における損益計算書

ファクタリングは、売掛金という自身の流動資産を活かした資金調達方法のため、貸借対照表上で見ると負債にならないというメリットがあります。

しかし、売掛債権は本来の資金化日まで待てば、満額で受け取れます。
それを、手数料を支払って早期現金化しているのですから、当然そのぶん企業の利益は減るのです。

実際に、ファクタリングを利用した場合としなかった場合とで、企業がある期間においてどれくらいの利益を出したのかを表す、損益計算書を比較してみましょう

仕入れ代金70万円の商品を、100万円で取引先に売った場合を例に考えてみます。

ファクタリングを利用しなかった場合の損益計算書

それではまず最初に、ファクタリングを利用しなかった場合損益計算書について見ていきます。

売上高100万円
売上原価70万円
売上総利益30万円

ファクタリングをしない場合は、売掛金100万円がそのまま入ってくるので、そこから仕入れ代金70万円を引いた30万円が、まるまる企業の利益となります。

ファクタリングを利用した場合の損益計算書

次に、同じく70万円の仕入れ代金で、100万円の売掛債権を手数料10%でファクタリングした場合の損益計算書について見ていきます。

売上高100万円
売上原価70万円
営業外費用10万円
経常利益20万円

ファクタリングの手数料は、営業外費用に区分されます。
このように、ファクタリングを利用するとその手数料分である10万円が損失し、本来であれば30万円の利益が20万円に減少してしまいます。

会計処理上のメリット

会計処理上のメリット

それでは、以上を踏まえて会計処理において、ファクタリングを利用するメリットについて解説します。

①負債ではない

ファクタリングは、上記のように、売掛債権担保融資手形割引と比較されます。

しかし、これらは、あくまでも売掛債権や約束手形を担保とする融資。

売掛金が支払われなかった場合には、利用企業に補償義務があり、なおかつ調達資金は負債として計上されてしまいます。

それに対してファクタリングは、売掛金という流動資産を活用して現金をつくる方法です。
担保を捧げて融資を受けているわけではないので、仕訳上負債にはなりません

さらに、回収リスクごと売掛債権を売却しているので、売掛先から売掛金が支払われない可能性がある場合のリスクヘッジにもなります。

②貸借対照表のオフバランス化が可能

ファクタリングは、負債を増やさずに、売掛金を縮小することによって資金を調達する仕組みです。

このため、計上する負債や資産のボリュームを減らし、貸借対照表(バランスシート/BS)を軽くすることができます。

会計処理上のデメリット

会計処理上のデメリット

ファクタリングは、負債という仕訳なくして資金調達することができ、さらに貸借対照表は軽くなるというメリットがあります。 しかし、そのぶん手数料という営業外費用がかかることを忘れてはいけません。
本来、売掛金は支払期日まで待てば、額面通りの金額が入るはず。 それを、わざわざファクタリング会社に手数料を払って早期現金化するいうことは、そのぶん確実に利用企業の利益は減少するということです。

ネット上の記事では、「ファクタリングを利用すると、貸借対照表がスリム化されることによって、銀行融資も受けやすくなる」という」と会計処理上のメリッをあげているところもありますが、これは嘘!

銀行融資では、損益計算書(PL)も重要な評価材料となりますので、負債がなくとも、利益の減少によって経営状態が悪くなってしまっては、審査に通ることは不可能

特に、2社間ファクタリングの手数料は、銀行や消費者金融よりもはるかに高くつきますから、ファクタリングを利用しているということがバレることのほうがマイナス評価です。

このため、会計処理上のメリットを目的にファクタリングを利用するのはあまりおすすめできません。

緊急性の高い資金調達や、何らかの事情で融資が受けられない場合のつなぎ資金など、ファクタリングのメリットがもっと活かせる場面での利用が賢明です。

まとめ

ファクタリングは売掛債権を活用した資金調達方法

ファクタリングは一見、手形割引売掛債権担保融資に類似したサービスのように思われます。
が、融資契約ではなく債権譲渡に該当するという取引の特性上、会計処理上の仕訳が違うので、注意が必要です。
不明点があれば会計士税理士のほか、会計処理のサポートをおこなっているファクタリング会社に問い合わせましょう。